肺や肝臓… 胴体も対象に
がんを狙い撃ちする放射線治療ロボット「サイバーナイフ」が、肺や肝臓のがんにも使えることになった。従来は頭と首(頭頸(とうけい)部)のがんに治療対象が限られていたが、胴体のがんにも使用が認められた。各医療機関での準備や最終的な手続きを経て、早ければ年内に保険を使った治療が始まる見込みだ。
サイバーナイフは、六つの関節で自在に動くロボットアームの先に、エックス線の発射装置(直線加速器)を取り付けた治療機器。画像診断のデータを基に、病巣の位置を正確にとらえ、様々な角度から少しずつ放射線を当てて、がんだけに高いエネルギーを集中させる。がんをたたく効果が高い一方、周囲の正常組織への影響が少ない。こうした治療法は「定位照射」と呼ばれる。
国内では1996年に装置の販売が承認されて以来、頭や首のがんに威力を発揮してきた。年間600以上と世界一の治療件数のある横浜サイバーナイフセンター院長の佐藤健吾さんは「治療に伴って吐き気が出ることもあるが、通常の放射線治療に比べ、副作用は格段に少ない。手術が難しい幼児や高齢者にも有効」と話す。
この治療機の特長は、呼吸などに伴って病巣の位置がずれても、1センチ四方の範囲内なら、巡航ミサイルのように追尾できることだ。軍事技術を転用しており、0・5ミリ程度の精度で病巣を撃ち抜く。本来なら、ほとんど動かない頭頸部のがんだけでは“役不足”だった。
今年6月、治療対象が胴体のがんに拡大された。各施設は、肺がん、肝臓がん治療のためのソフトウエアの追加など準備を進めている。
肺がんは、日本人男性で最も死亡率が高いがん。早期なら、米国ではサイバーナイフにより、がんを抑え込む率が2年間で6〜7割と、手術に劣らないとのデータもある。
患者は、全身を固定する特殊なマットに寝ているだけで、30分前後で治療が終わる。治療にかかる期間は3〜5日ほどだ。
メーカーは、前立腺、膵臓(すいぞう)、骨がん(転移を含む)や乳がんの治療にも保険適用を求め、来年1月以降に厚生労働省への申請手続きを行う予定。前立腺は、膀胱(ぼうこう)に尿がたまる時などに動くため、サイバーナイフの能力が生かせるとみられるがんの一つだ。
ただ、様々な角度から放射線を当てる定位照射では、量は少なくても照射の範囲が広いため、数年から数十年後に新たながんが発生する可能性も指摘されている。今後、長期的な効果や副作用の検証が必要だ。
サイバーナイフで肺がんなどの治療を計画している主な医療機関と開始予定時期
横浜サイバーナイフセンター=年内 (電)045・555・7333
埼玉医大国際医療センター(埼玉県日高市)=年明け早々 (電)042・984・4111
九州大(福岡市)=未定 (電)092・641・1151
戸畑共立病院(北九州市)=未定 (電)093・871・5421
熊本放射線外科(熊本市)=未定 (電)096・370・0712
大分岡病院(大分市)=未定 (電)097・522・3131
(2008年8月8日 読売新聞)

